2011.10.13. 助動詞を「強動詞」と言い換えてみたら?


本記事は「英語教育2.0」管理人anfieldroadさんによる企画「『英語教育ブログ』みんなで書けば怖くない!」に参加するものです。

第2回は「英文法指導」。他の皆さんが書かれた記事へのリンクは↓からどうぞ。

http://d.hatena.ne.jp/anfieldroad/20111001

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「助動詞」という名称には、どうしても「(本)動詞の添え物」という印象がつきまといます。じっさい、文法書の説明も、そのような印象を与えるものが多いようです。

助動詞(Auxiliary Verb)は必ず動詞に伴って、その動詞にいろいろな意味を付け加えたり、また疑問・否定・時制・態などを表したりするものである。(『総解英文法』p.409)

助動詞は動詞の一種で、本動詞だけでは表すことのできない可能・必然・義務などの意味を表す。また本動詞と結びついて時制・法・態・疑問・否定などを表す。

助動詞には、動詞に「可能」「必然」「義務」などの意味を添える法助動詞(can, must, may, will, shall, ought to, used to, dare, need)と、それ自体は特に意味を持たずに、時制・態・疑問や否定などの文法上の形を作る働きをするもの(have, be, do)とがある。(『ロイヤル英文法』p.432)

「本動詞/助動詞」という用語の区別から両者の序列は明らかですし、「動詞に伴って」「意味を付け加え」「本動詞と結びついて」「意味を添える」などの言葉遣いも、その序列を印象付けるものであるように思われます。

たしかに、意味の観点からは、助動詞は本動詞を補助する存在に過ぎないように見えます。

それに、

  (1a) William plays viola.

  (1b) William can play viola.

とは言えても、

  (1c) *William can viola.

は、普通は非文だということを考えても、助動詞は本動詞の添え物という見方はおかしくない気がします。

しかし、もうちょっと統語的に考えていくと、様相はがらりと変わってきます。

助動詞のない文は、たとえばこんな感じ。

  (2a) Wendy speaks Russian surprisingly well.

本動詞が時制を持っていて、主語の人称とも一致しています。

ところが、助動詞が登場すると、こんな感じ。

  (2b) Wendy does speak Russian, whether you believe it or not.

  (2c) Wendy can speak a bit of Russian.

  (2d) Wendy is speaking Russian on the phone now.

    (2e) Russian is spoken in Wendy's country.

  (2f) Wendy has spoken Russian for more than six years after she moved to Saint Petersburg.

時制も人称も助動詞が独り占めしてしまって、あわれ本動詞は身ぐるみはがされたり(2b, 2c)、逆に余計な飾りを付けられたり(2d)、変身させられたり(2e)しなければ助動詞の横に置いてもらうことがかないません。

しかも、こうなると本動詞は独り立ちすることすらできなくなります。

  (2g) *Wendy speak Russian, whether you believe it or not.

  (2h) *Wendy speak a bit of Russian.

  (2i) *Wendy speaking Russian on the phone now.

    (2j) *Russian spoken in Wendy's country.

  (2k) *Wendy spoken Russian for more

まるで、ジャイアンにいたずらされて、外を出歩けなくなったのび太くんのようです。

さらに、助動詞は自ら動いて否定文や疑問文を作ることができます。

   (3a) Cindy can speak German.

   (3b) Cindy cannot speak German.

   (3c) Can Cindy speak German?

しかし、本動詞は自ら動くことはできず、否定文や疑問文を作るには助動詞 do に支えてもらう(do-support)必要があります。

   (3d) Cindy speaks German.

   (3e) Cindy does not speak German.

   (3f) Does Cindy speak German?

まさに、ジャイアンの「お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの」状態。

助動詞は好き勝手に振舞えるのに対し、本動詞は助動詞に調子を合わせているという図式ですから、もう「本」動詞と「助」動詞の序列は逆転です。

とはいえ、上で述べたように、助動詞は助動詞で独り立ちできないものですから、必ず本動詞を子分として従えていなければなりません。ジャイアンも本当はのび太が好きなので、彼がいないと物足りないのですよね。

さて、このような助動詞と本動詞との関係をふまえると、「助 vs 本」という区別では、助動詞の統語的な重要性が不当に低く評価されるような気がしてなりません。

そこで、私は次のような提案をしてみます。

  従来の「助動詞」を、強い動詞「強動詞」と呼ぶ。

  従来の「(本)動詞」を、弱い動詞「弱動詞」と呼ぶ。

単なるラベルの貼り替えではありますが、こうすると、次のような説明がわかりやすくなります。

  強動詞がいなければ、弱動詞は一人前の動詞として好き勝手に振舞える=単独で述語動詞になれる。

  しかし、強動詞がいると弱動詞は強動詞の言いなりに形を変えなければならない。

  形の変わってしまった弱動詞は、もはや一人前の動詞ではない=単独で述語動詞になれない。

  強動詞は強いので自分で動いて否定文・疑問文を作る力がある。

  弱動詞は弱いので、自分で動く力はなく、強動詞の力を借りて否定文・疑問文を作る。

さらに、弱いか強いかの区別だけで、どちらも「動詞」であることから、文を作るには必須の要素と位置づけてみてはどうでしょう。文構造を教える最初期から、

  S+V+X

ではなくて、

  S+sV+wV+X (sV = strong verb / wV = weak verb )

という枠組みで指導を始めるのです。(strong verb、weak verbというのは、実際はそれぞれ「強変化動詞=不規則変化動詞」「弱変化動詞=規則変化動詞」に相当する用語ですが、ここではその話は置いておきます。)

そのとき、

  強動詞=be、have、do、および法助動詞

  弱動詞=それ以外の一般動詞

とグループ分けしておく。

さらに、be、have、doにも語彙的意味を認める。

  be〜 =「〜という状態である」

  have〜 =「〜という状態を持っている」

  do〜 =「〜という行為をする」

これは、最近は一般に浸透してきた「コアミーニング」の考え方とも合致します。すなわち、

  be + -ing(進行形) と be + -ed(受動態)は、どちらも「〜(分詞)という状態である」意味が共通している

  have + -ed(完了形)には、「〜(分詞)という状態を持っている」 という意味がある

ということです。doについても同じように考えてよいでしょう。

    I do know what his secret is.

  「わたしは次に述べる行為をします → 彼の秘密が何かを知っているという行為」(「行為」という日本語がしっくりきませんけど)

こうすると、従来、be、have、doには本動詞としての用法と助動詞としての用法の2つを認めてきましたが、その両者を1つの語彙的意味ですっきりと整理できるように思います。

で、

  強動詞がいなければ、弱動詞は単独で述語動詞になれる。

  強動詞は多くの場合、弱動詞を子分に従えて述語動詞になる。

  be、have、do の3語だけは特別強い動詞(「最強動詞」?)なので、弱動詞を子分に従えなくても単独で述語動詞になれる。

というようなルールにしておけば、動詞まわりのことはだいたい説明ができるのではないでしょうか。

で、中学1年生(でなくてもいいですが)の入門期に、英語の文構造の基本形を指導するところで、「be動詞と一般動詞」という区別ではなくて、「強動詞と弱動詞」という区別で指導を始めます。

文構造のフレームワークとしては、

だれが・なには 〜する・である(強動詞) 〜する・である(弱動詞) だれ なに
S(        ) sV(            ) wV(            ) O1(       ) O2(       )

というような形を提示します。

で、上のようなルールに則って、

   am、is、are(強動詞) と、play や like(弱動詞) では入る位置が違う

と説明しておく。さらに、

   am、is、are(強動詞)と、play や like(弱動詞)の両方を使う場合は、弱動詞の形を変える

と説明すれば、悪名高い「be動詞と一般動詞の併用」という典型的な誤りにも対処しやすくなるように思います。

というか、そもそもわたしは、このような考え方をするようになってから、be動詞と一般動詞の併用は、むしろ自然な言語発達の一部なのではないかと思うようになってきましたが、まあ、それは置いておきます。

さらに、もともと強動詞と弱動詞は入る場所が違うわけですから、進行形・完了形・受動態の導入もスムーズです。

と、まあ、少々ラベルの貼り替えをするだけで、見通しのよい説明と指導過程および教材ができるのではないかと構想しています。

これまでは「助動詞」「本動詞」という用語を使いながら、これまで述べたような指導を行ってきました。

で、「助動詞」「本動詞」でもいいし、「一類動詞」「二類動詞」でもいいし、「タイプA動詞」「タイプB動詞」でもいいのですが、やはり「強い」「弱い」という言い方の方がわかりやすいし、発展性があるような気もしています。アラビア語などでは、別の意味で「弱動詞」という用語があるようで、そのあたりと混同してしまうとよくないかな、とは思いますが。

いかがでしょうか。

(参考)「be動詞の正体は?」
 


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