2000.2.28. "a number of〜"について

ひさびさに「やられたっ!」と思いました。とある専門書を読んでいると、"This chapter continues the discussion of techniques for data collection by overviewing a number of non-observational methods."という1文に目が止まりました。この1つ前の章では、"observational methods"について、いくつかの具体例を挙げて説明していましたが、「多数」とは言えない数でした。この章においてもそれほど多くの手法(methods)を扱っているわけではありませんで、文脈的には"a number of"の位置には「いくつかの」ぐらいの意味を表す表現が入るべきところでした。

で、私は"a number of"=「たくさんの」だと思い込んでいたもので(そのように教わり、そのように教えてきた←おいおい)、「あれっ?」と思いました。無視しようかとも思ったのですが、どうにも気になったので手もとのCOBUILD英英辞典[CBDD]を引いてみました。

なんということか!"number 3 If there are a number of things or people, there are several of them. If there are any number of things or people, there is a large quantity of them."(太字:山岡)とあるではないか!ついでに"several"も念のために調べておくと、"Several is used to refer to an imprecise number of people or things that is not large but is greater than two."(太字:山岡)

ようするに、"a number of"は「いくつかの」の意味を表すということでした。しかもCBDDの記述に従えば、「たくさんの」の意味は無い、ということになります。少なくとも学習辞書に記載するほどの頻度では用いられないということです。

ちなみにロングマン[LDOCE]では"several"という定義、オックスフォードでは"A number of (ie some) problems have arisen."という用例が記載されており、どうやら"a number of"=「いくつかの,いくらかの」確定の模様。いずれの辞書も「たくさんの」に相当する表現として"a large number of"や"any number of""numbers of"といったものが挙げられており、こちらもCBDDと一致しているようです。

ついでに駄目押しということで安藤・山田.1995.『現代英米語用法事典』.研究社.を参照すると、「a number ofは『いくつかの』(several)の意味で用いられる。」として、「たくさんの」に対しては上記辞書と同様の表現が挙げられていました。(p.366-367;本文を読む限り情報ソースがこれらの辞書であるということなので当然かもしれませんが。でも著者クラスの研究者が学習辞書だけ見て書くわけがないと思うし…。)

なるほどなるほど。"a number of"は「たくさんの」じゃなくて「いくつかの,いくらかの」という意味だったんですね…。

さてさて、では、この程度の表現について今の今まで誤解しつづけてきたのは全く私の怠慢のせいなのか。まあ、塾ででもウソ教えてたわけだから、私の不勉強に責任があることは間違いない。が、それにしても、なぜなぜなぜ(笑)今までこの程度の情報に触れなかったのか。と、半ば自己弁護的に英和辞典をめくってみました。すると…。

大修館『アクティブ・ジーニアス英和辞典』には「a number of:多数の…;若干数の…」(太字:原文どおり)と併記し、「多数の」の方が高頻度であることを示しています。しかもご丁寧なことに、「語法」囲み記事で「『多数の』,『若干の』のいずれの意味かは前後の文脈によるが、現在では『いくらか』の意ではa certain number ofを用いa number ofを「多くの」の意に用いるのが普通。」という解説まで入っています。

他の英和辞典も、例えば東京書籍『フェイバリット英和辞典』は「a number of 多数の…;いくつかの…」(太字:原文どおり)、小学館『プログレッシブ英和中辞典』も、定義こそ「((漠然とした数を指して))若干[相当]数(の…)」としているものの、用例"A〜of students failed in the examination"に対して「多くの学生が試験に落ちた」との訳文を与えており、いまひとつ正確だとは言えません。大学受験用の辞書である朝日出版社『MD英語』でも「a number of 1.多くの,2.いくつかの」としており、「多くの」を優先しています。

あーあー、これだから英和辞典は気をつけないと…とか思っていたら、三省堂が比較的がんばっていました。『ニューセンチュリー英和辞典』『新グローバル英和辞典』とも「a number of…ある数の…,いくつかの…,(several),たくさんの…(many)」(太字:原文のまま)として、用例も"There are a number of reasons why I don't like Will."に対して「僕がウィルを嫌う理由はいくつか[たくさん]ある」を当てており、一貫して「いくつかの」を優先させています。

私は受験生時代から『ジーニアス』シリーズの愛用者で、授業の準備などでも他の英和辞典をあまり見なかったことが、どうやら"a number of"誤解の原因だったようです。だったら、さっさと英英辞典を読んでればよかったんですが、あまりに自分の知識を確信していて、調べる気にもならなかったのでしょうねえ、今まで。あー恥ずかし。

ということで、やっぱり英英辞書を読むクセをつけないと、なかなか正確な知識が身につかないということがよくわかった今回の一件でした。まあ、参照する英英辞典が正確だ、という前提のもとでですが。

そういえば、最近『英語教育』誌の「クエスチョン・ボックス」を読んでないので、ひょっとしたらもう『アクティブ・ジーニアス』の記述については指摘が出ているかもしれませんね。調べとこう。



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