2004.10.10. be動詞の正体は?

学校で扱う英文法の範囲では、英語の動詞は大きく「一般動詞」と「be動詞」の2種類に分けられます。私自身、中学生の時にそう教わり、ごく当たり前のこととして受け入れてきました。

しかし、英語とのつきあいが深まれば深まるほどその存在が異様に見えてきたのがbe動詞。
「動詞」といいつつ一般動詞とはかなり違ったふるまいを見せ、しかも英語に存在するのはたったの1種類。時制・人称による変化はあれど原形は"be"のみ。
英語という言語の体系において、かなりの異端児です。
その異質性ゆえに、初級レベルを教える時にはいつも、「be動詞さえなければもっと英語は簡単なのに!!」と思ってしまいます。

はたしてこの異端児。いったい何者なのでしょうか。
まず、一般動詞と比較して何が異なるのかを確認します。

「一般動詞」というカテゴリも大雑把なもので、学校でこの用語が使われる場合は、せいぜい「非be動詞」という程度の意味です。文法書などでは、より厳密な分類がなされることが多いでしょう。しかし、英語の動詞が「be動詞」と「非be動詞」に分けられること自体がbe動詞の特異性をよく示しているといえます。

1.否定文・疑問文
be動詞の最大の特徴は、否定文・疑問文を作るときに、do・doesを用いずに動詞自身がnotを従えたり語順の変更を起こしたりすることです。

  (be動詞)
    He is in the classroom.
   →He is not in the classroom.
   →Is he in the classroom?
   →Where is he?

  (一般動詞)
    He plays soft tennis.
   →He does not play soft tennis.
   →Does he play soft tennis?
   →What does he play?

2.動詞句の省略
また、be動詞の後に続く動詞句は省略することが可能ですが、一般動詞の場合はそれが許されません。

   ○John was leaving Shiga, and Bill was, too.
   ×John left Shiga, and Bill left, too.

3."n't"との結合 および 付加疑問文
さらに、be動詞だけに見られる特徴としては、notの短縮形"n't"との結合が可能であること

   He isn't in the classroom.

あるいは、付加疑問文を作ることができること

   He is in the classroom, isn't he?

が挙げられます。

このように、be動詞は、英語動詞の大半を占める「一般動詞」とは明らかに異なったふるまいを見せます。これだけ異なるものが同じ「動詞」というカテゴリに入れられているというのは、中学校以来の慣れを捨て改めて考え直してみると、ひじょうに奇妙な感じを受けます。もちろん、長い英語研究の歴史の中で、それなりの理論的経緯があって「be=動詞」とされるに到ったのでしょう。しかし、「もっとスッキリとした整理の仕方はないものか」と考えてみることにも価値がありそうです。

そう考えてみると、英語の中に次のような例があることに気がつきます。

  1.He can play soft tennis.
   →1-1:He can not play soft tennis.
   →1-2:He can't play soft tennis.
   →1-3:Can he play soft tennis.
   →1-4:He can play soft tennis, can't he?

  2.John can play soft tennis, and Bob can, too.

それぞれ、1−1:否定文  1−2:"n't"との結合  1−3:疑問文  1−4:付加疑問文  2:動詞句省略
の例ですが、見事にbe動詞と同じ用法です。

この事実を踏まえると、be動詞は、一般動詞よりもむしろ助動詞に近い存在だとはいえないでしょうか。
金子・遠藤(2001:32)に、次のような記述があります。
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(97) 縮約否定辞n'tとの結合
   a. John isn't reading the book.
   b. Bill wasn't loved by Mary.
   c. Bill isn't good at speaking French.

(98) 主語・助動詞倒置
   a. Is he reading the book?
   b. Was he loved by Mary?
   c. Is he good at speaking French?

(99) 動詞句(述語句)削除
   a. John is leaving and Bill is [VP leaving], too.
   b. John was loved by Mary, but Bill was not [VP loved by mary].
   c. John is fond of ice cream, but Bill is not [AP fond of ice cream].

(100) 付加疑問文
   a. John is coming, isn't he?
   b. John is loved by Mary, isn't he?
   c. This cake is very delicious, isn't it?

 このように、進行相のbe、受動態のbe、繋辞のbeは、すべて助動詞としての特性を示し、時制による形態変化も同一である(am, are, is, was, were)という共通性をもつ。

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(97)〜(100)のいずれの用例においても、a:進行形、b:受動態、c:繋辞(copula)の例となっており、すべて一貫したふるまいを見せています。

伝統的な英文法においては、c例のように繋辞として用いられる場合は「動詞」、a・b例のように相や態を示すために用いられる場合は「助動詞」として区別がされており、学習英和辞書でもそのように記されています。また、学校で扱われる範囲では、相・態用法におけるbe動詞は、一般動詞の形態変化の一部という扱いをするのが一般的でしょう。とりたてて「助動詞」として分類することはあまりないでしょうし、仮に「この用法のbe動詞は助動詞である」という説明をするにしても便宜的なもので、can, may, willといった助動詞と等質な存在として体系的に関連づけて考えることはほとんどないように思われます。

しかし、繋辞用法、相・態用法の区別なくbe動詞のふるまいは一貫しています。ひとまずこれら全ての用法のbe動詞は助動詞の仲間であると考えることにします。

それでは、助動詞としてのbe動詞にはどのような文法的特徴があるのでしょうか。beに後続する要素に着目してみます。

   a. John is reading the book. [現在分詞句]
   b. Bill was loved by Mary. [過去分詞句(受動分詞句)]
   c. Bill is good at speaking French. [形容詞句]
   d. Mary was in the garden.  [前置詞句]
   e. Jack is a student.  [名詞句]

まるでバラバラです。
canやmayといった助動詞が原形(不定形)を従えるという点で一貫しているのとは対照的に、beの後ろは原形以外ならば何でもOKという感じです。このあたりの不統一性がbeが助動詞の仲間と考えられてこなかった理由のひとつかもしれませんが、実はこれらを統一的に捉える理論があります。「小節(small clause)」という考え方です。

「小節」とは、意味的には主部・述部がそろって節(clause)と同等であるが、be動詞を欠いている構造のことです。5文型でいうSVOC文型の「OC」に当たる部分を思い起こすのが最もわかりやすいかと思います。

   She cut [ the envelope open ].

の、[the envelope open]の部分は、意味的には「(主)the envelope (述)open」という関係があります。[the envelope was open]のようにbe動詞を補えば独立した「節」になりますが、この例のようにbe動詞なしで文中に埋め込まれている場合、この構造を「小節」と呼びます。

上のa〜eの用例におけるいろいろな構造は、全てこの「小節」を形成していると考えられるのです。
a〜eの文ができあがる前には、もともと次のa1〜e1のような小節構造があります。

   a1. [ John reading the book ]
   b1. [ Bill loved by Mary ]
   c1. [ Bill good at speaking French ]
   d1. [ Mary in the garden ]
   e1. [ Jack a student ]

これらがbeと結合します。(a2〜e2)

   a2. is + [ John reading the book ]
   b2. was + [ Bill loved by Mary ]
   c2. is + [ Bill good at speaking French ]
   d2. was + [ Mary in the garden ]
   e2. is + [ Jack a student ]

このままでは文法的主語がないので英文として成立しません。そこで小節の中の「〜は/が」に当たる要素が文頭に出てきて、結果的にa〜eの英文ができあがる、というプロセスがあります。(もちろんこれは、ひじょうに簡略化した説明です。厳密にはもっと複雑な説明となりますが、ここでは割愛します。)
つまり、「beは小節が後続する助動詞である」と一般化することができるわけです。と。

この小節の考え方は、be動詞に関する部分だけを取り出して考えると場当たり的な説明に見えるかもしれませんが、実際にとても重要な考え方です。ここに関係する範囲で一例を挙げてみます。

   a. Some students were waiting for their teacher.
   b. There were some students waiting for their teacher.
   c. were + [ some students waiting for their teacher ]

aとbは、ニュアンスの違いがあるとはいえ、ほぼ同じ意味を表します。その理由は、これら2つの文はどちらもcという構造から作られているということです。上に示した例のように、小節の中の要素を文頭に出すとaの文ができあがり、「文法的な主語が必要である」という形式上の必要性を満たすだけの形式的な主語thereを文頭に置けば、bの文ができあがります。このbのように、小節の構造がそのまま残っている文が可能であるという点からも、beが小節を従える助動詞であるという考え方が支持されます。
(ちなみに、be以外の助動詞は何を補部に取るのかというと、「IP:Inflectional Phrase」つまりふつうの「節」と考えるのが簡単でしょう。IPの考え方がよくわからないという方は、こちらの「補1−2」をご覧ください。)

ということで、以上の考察から、be動詞を助動詞と考えると、文法が少し整理されてスッキリしたものになると言えそうです。

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ところが、「じゃあ、beは今日から助動詞と考えましょう」と割り切れるものかというと、それほど簡単な話でもないのです。「be=助動詞」と定義づけを変えることで理論的に整合性が生まれる部分も大きいのですが、その一方でbeと他の一般動詞の間に見過ごせない共通性があることも確かです。その共通性についてもきちんと考えておく必要があります

ここでは、いったん「be=動詞」という従来の考え方に戻ったうえで、be動詞が要求する文型の特徴を整理してみることにします。

英語の動詞の多くは他動詞として用いられる場合、後ろには目的語(O)を従えます。目的語とは、荒っぽく言うと日本語で「〜を/〜に」を付けて訳すことのできる名詞のことで、主語が動詞によって表される作用を及ぼしていく「対象」のことです。(厳密には例外もありますが、文法全体から見れば派生的・周辺的です)

いちおう典型的な例を確認してみます。
  I play soccer. (SVO)
  I gave Mary a racket. (SVOO)
上の例では、"I"は"soccer"に対して"play"という作用を及ぼしていきます。
下の例では、"gave"という作用の及ぶ対象が"Mary"と"a racket"と2つありますが、"I"が"gave"という作用を通じて"Mary"や"racket"と関わっているという点は同じです。
このような例におけるsoccer、Mary、a racketのような名詞(句)が「目的語」です。

いっぽう、beは5文型でいえばSVCの文型を作る動詞と考えられています。SVC文型の特徴は、Vの後ろの要素が「目的語」ではなく「補語」であるということです。「補語」を一言で定義することに難しさはあるのですが、目的語との比較で言えば、主語の状態説明をする要素のことであり、対応する特定の日本語訳はありません。

典型例は次のようなものです。
  I am a teacher. (SVC)
  I am happy. (SVC)
上の例では、"I"と"a teacher"の関係は「Iとは何者かというと、 a teacherである」という被説明←説明関係です。
下の例でも、「Iはどのような状態にあるかというと、happyな状態にある」という被説明←説明関係があります。

このように、目的語を取る文と補語を取る文では、主語と動詞の後ろの要素の関係が異なるわけです。この違いがどこから生まれるかというと、「動詞が必要とする要素の種類と場所の違い」と考えられています。

1つの英文を成立させるためには、動詞の前後に何らかの要素を配置する必要があります。つまり、動詞の前には「主語」、動詞の後ろには「目的語/補語」というぐあいです。このとき、動詞が必要とする要素のことを「項(argument)」と呼び、動詞の前にあって主語の役割を持つ項を「外項(external argument)」、主語以外で動詞の後ろにある要素を「内項(internal argument)」と呼ぶことがあります。枝分かれ図を使って図示すると下のようになります。



たとえば、
   1. I play soccer.
   2. I am a teacher.
という文であれば、



のように表すことができます。
この図は、最終的にできあがった文を表しているものですが、実は、この最終的な文ができあがるまでに、いろいろな文法操作の過程があります。そして、1のようなSVO文型と2のようなSVC文型では、その過程が違うとされています。

1のSVO文型の方は、文を作る最初の段階から上図のように、外項つまり主語の位置に主語となる要素(この場合は"I")が置かれます。
しかし、2のSVC文型の場合は、最初の段階では下図のような構造をしているとされます。



つまり、内項だけがあって、外項はない状態です。このとき内項には、[ I   a teacher ]という小節のような形があると考えられます。しかし、このままでは外項の位置が空ですから、文の主語がないことになります。英語では必ず文には主語がなければならない、という文法的制約がありますから、その制約を満たすために、内項にある"I"が外項の位置まで移動してきます(より正確には、引きつけられます)。



このような、最初から主語が外項の位置にあるか、それとも文を作る過程で内項の要素が外項に移動して主語となるか、というのが、目的語を取る動詞と補語を取る動詞の最大の違いです。

では、後者のように内項の要素を外項へと移動させるタイプの動詞がbeだけかというと、そうではありません。目的語を取る動詞に比べると圧倒的に数は少ないですが、「一般動詞」の中にもこのタイプの動詞が存在します。代表的な例は「〜になる」という意味のbecome類、「〜にみえる・思える」という意味のlook類、「〜のままである」という意味のremain類とされており、これらの類に属する動詞はかなり数が限られています。しかし、
   Ted lived and died a bachelor. 「テッドは生涯独身を通した」
   Let's part good friends.  「親友として別れましょう」
のような例もあり、他の動詞もある程度まではこの文型で用いることが可能です。

つまり、beは必ずしも英語の「動詞」としての性格を完全に持たないわけではないということです。英語の典型的な一般動詞比べるとbeが文法的にかなり異なったふるまいを見せることは既に明らかです。しかし、英語動詞の典型例ではないにせよ文法的にbeと似たふるまいを見せる一般動詞がある以上、beと一般動詞を完全に切り離し、「beは助動詞である」と言い切ってしまうのも難しい気がします。

そもそも、willやmayのような典型的な助動詞は必ず後ろに動詞を置かねばなりませんし、後半で見てきたような項構造(argument structure)の違いには何の影響も及ぼしません(項構造に関係するのは後ろの動詞だから)。ところが、beの場合はそれ自身が項構造に直接関係する力を持っており、それはまさに動詞の性質にほかなりません。

このように考えてくると、beは今まで「動詞」と呼ばれてきたものと「助動詞」と呼ばれてきたものの中間的な存在であるといえるのかもしれません。

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ただ、ここで考えておかなければならないのが、「助動詞」の定義です。安井(1996)は動詞を「特別動詞」と「一般動詞」に分けたうえで、「特別動詞」の中に「助動詞」を含めていますが、「助動詞」というカテゴリに関して次のように述べています。

「要するに、助動詞という概念は、きわめてあいまいなものであり、語形変化や語結合の上で、特別な性質をもっている動詞の一群といったような意味内容しかもっていないように思われる。助動詞という概念があいまいなのは、助動詞という語類が、特定な統一された基準によって設定されたものではないからである。」(p.162)

また、Radford(2004)は、名詞句・前置詞句・節を補部に取る動詞が本来の(狭義の)動詞であり、それ以外の要素を補部に取る動詞は「助動詞」"auxiliary verb"であるという議論をしています。つまり、「動詞」という大きなカテゴリの中に内包される形で「助動詞」というカテゴリが存在しているという考え方です。

このRadfordやHaegeman&Gueron(1999)などは、beを「繰り上げ動詞(raising verb)」の一種として扱っていますが、willやhaveなどの「助動詞」も、この繰り上げ動詞の一種とされていますので、ここでは「助動詞」というカテゴリ自体の定義が違っていると考えるべきでしょう。(「繰り上げ動詞」とは、beのように、否定文・疑問文を作るときに、前方に「繰り上がって」くるタイプの動詞のことです)Radfordは、"auxiliary verb"というカテゴリの定義は改めて詳細に考え直さねばならない旨のことも述べています。

なぜこのように「助動詞」の位置づけがあいまいなのか、特にbeの扱いがスッキリしないのかというと、歴史的な要因があります。

現代英語においては、be以外にもhaveやneedといった動詞が、本来の動詞としての用法と、繰り上げ動詞(=助動詞)としての用法の両方を持っています。しかし、このタイプの動詞は現代英語ではごく限られた数しかなく、これ以上新たに加わることはありません。ところが、昔の英語には繰り上げの性質を持つ動詞が多くあったことがわかっています。

昔は繰り上げ動詞が普通に見られたのに、それが現代英語では少数に限られているというのは、英語全体が繰り上げをしない方向に変化してきていることを示します。そう考えると、beやhave、needのような立場のあいまいな語は、英語の歴史的な変化の中で「取り残された」少数の例外、と言うことができるでしょう。

つまり、歴史的に生じた例外が、現代英語における動詞・助動詞といったカテゴリ分類に混乱を引き起こしている一要因となっているということです。

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さて、本題の「be動詞の正体は何か」という問いに戻りますが、結論としては「be動詞は助動詞の仲間である」と言ってよいと思います。ただし、「助動詞」というカテゴリについては再検討の余地があると言うべきでしょう。




なお、本記事における言語学的な説明は、下に示す参考文献から私なりの整理をしたものです。また、説明をできるだけ平易にするため、かなり簡略化した書き方をしていますので、本来の言語学理論での厳密な説明法については、参考文献をご参照ください。

【参考文献】
金子義明・遠藤喜雄(2001)『機能範疇』研究社出版
安井稔(1996)『英文法総覧』開拓社
Haegeman, Liliane & Gueron, Jacqueline (1999) English Grammar - a generative perspective Blackwell
Radford, Andrew (2004) Minimalist Syntax - Exploring the structure of English Cambridge University Press


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