2005.4.24. 時・条件を表す副詞節ではなぜ現在形?
今回も、今さらながらに気がついたお話です。 If he comes here while I'm gone, please tell him that I'll call him later. のような文については、学習参考書などでは「時・条件を表す副詞節の中では、未来のことも現在形で表す」といった表現で解説がなされています。高校ぐらいでの時制の扱いとしてはわりと初歩的な事項ですので、この事柄を理解して使えるようになるにはそれほど困難はないかもしれません。 しかし、私はずっとこの現象が不思議でなりませんでした。なぜ未来のことなのに現在形なのか。確定的な未来を現在形で表す例はありますが、条件節はその名の通りあくまで「もし〜ならば」という不確定の事柄を表しますから、そんなところに現在形を用いるのはまったく理解できなかったのです。 学習参考書や英語教師向けの書籍では、いろいろな説明が試みられていて、私もいくつか目にしたことがあります。たとえば「"will"というのは100%の確信を表す助動詞である。それを"if"のような確率50%の要素と併用することは論理矛盾だから、時・条件節ではwillを用いない」であるとか「"if"や"when"と言った時点でそれが未来の事柄であることは明白なので、言語の経済性の原理から見て冗長なwillは用いない」などといった説明を覚えています。 たしかにこのように言われるとなんとなく納得してしまいそうなのですが、これらはあくまで便宜的な説明法であり、けっしてこの現象の本質を示すものではありません。その証拠に、次のような例があります。 (1) If you will go, I will go. (もし君がいくつもりなら僕も行くよ)=if節は現在の事柄を表す 明らかに条件節でwillを用いている例ですが、適格な英語です。これは次の(2)と好対照をなしています。 (2) If you go, I will go. (もし君が行ったら僕も行くよ)=if節は未来の事柄を表す 私はこのような例をうまく説明する考え方がわからず、ずっとモヤモヤしていたのですが、最近になって今さらながらに気がついたことがあります。それは、「英語に未来時制はない。したがってwillも未来時制の標識ではない。」ということです。 時・条件節で未来willを用いないことが疑問に思われるのは、willを未来表現の標識と考えているからです。そうではなくて、実はwillは未来表現というより、「未来の事柄に関する現在の心的状態=意思」を表す表現であると考えると、この現象はすっきりと説明できるように思います。 つまり… willは、未来に関する「現在の」意思を表す したがって、if...will...というのは、未来の事柄に関して「現在もし〜という意思を持っているのなら」という意味を表す。 それで、(1)"If you will go, I will go."という文は、「もし君が、行くという意思を現在持っているのであれば、僕も行くという意思を現在持つ」という意味になる。 一方、「もし未来において〜ならば」というように未来のことを表現しようとしても、英語には未来時制がないため、未来専属の表現が利用できない。 しかし、"if"や"when"という表現から語用論的に「未来」の意味は表すことができるので、とりあえずシンプルな現在形を代用的に未来表現とする。 それで、(2)"If you go, I will go"は、「未来においてもし君が行くという事態が生じたら、僕も行くという意思を現在持っている」という意味になる。 ということです。 言い換えれば、法助動詞は基本的に現在表現であるので、未来を表す時・条件節とは相容れない性格を持っている。それで、仕方なく現在形を未来表現として利用している、ということでしょう。canやmustと同じくwillもやはり「現在」を表す言葉であるということが、私はきちんと理解できていなかったのだと思います。 …というようなことに考えが至ったところで、ふと思い出して若林俊輔(著)『英語の素朴な疑問に答える36章』(ジャパンタイムス:1990年)をめくってみると、pp.144-146にきちんと書いてありました。「willは《現在形》です」。学生の頃に一度は目を通していたはずなのですが、今になってようやくストンと腑に落ちるようになったということでしょうか。修行が足りませんね。 |