2005.7.18. 『中学英語!訳読式授業からの挑戦』 瀧沢広人(著) 明治図書 2005年 1760円

最初タイトルの意味が飲み込めませんでした。「訳読式授業をぶっ壊そう」という意味なのか、「訳読式授業をやっている先生に、そこから抜け出してもらおう」という意味なのか。いずれにしても「訳読式授業をやってみましょう」とはとうてい読めませんでした。

なにせ「あの」瀧沢広人氏です。さまざまな楽しい活動を次々と繰り出し、活動主体の英語授業のあり方を具体的に示し続けてきた実践者です。私の勝手なイメージではあるのですが、「訳読」などという言葉とはおよそかけはなれた存在であるように思っていました。しかし、その瀧沢氏が「訳読式授業をやりましょう」というのです。これはよほどのことだと私には思われました。

そして、ひじょうにドキドキしながら読み始めたのですが、その確たる哲学に支えられた堅牢な記述(という評言が適切かわかりませんが…)に圧倒され、一気に最後まで読み通してしまいました。

本書で言う「訳読式授業」とは、もちろん「次、山岡。4行目から12行目まで読め。よし、訳せ」という「旧式」のものではありません。生徒全員が活動に参加するという原則を忠実に達成し、英語の学習法や学習態度といった基礎基本を丁寧に身につけさせ、なおかつ英語学習として効果のあがる「訳読式」が提唱されます。著者自らが「向山型算数」を範にした旨を述べているように、「中学校」「英語」という枠にとらわれないことで見えてきた授業のあり方であるといえるでしょう(「向山型」と聞いてピンと来ない方は、「向山洋一」「教育技術の法則化」「TOSS」といったキーワードを検索してみてください)。

本書が優れているのは、記述の具体性はもとより、それら個々の活動や指導言を生み出す源になった著者の気づきが明らかにされている点です。たとえば「学習の差はどこから生まれるのか」という問いに対して次のような記述があります。

「いくら教師が学習内容をわかりやすく、楽しく教えても、学ぶ側が鍛えられていなかったら、学習効果がうまくはかれないということに気づいたのである。…(中略)…ノートを開けることは誰でもできる。それなのに、そこですぐに開けられる生徒と開けられない生徒がいることを私は、知った。」(pp.36-37)
生徒が英語学習にどのように取り組むかという「学習態度」が学習の成否を左右するというのは最近よく指摘される点ですが、まさにその要素に関する気づきです。現場を持つ指導者にはきわめて生々しい実感として理解されるのではないでしょうか。このような「英語以前」の学習態度の基礎基本については、これまで英語授業の実践書の中ではほとんど周辺的にしか語られてこなかったのが実情でしょう。

しかし本書はこの問題をこそを真正面にとらえて論じています。しかも、「生徒に基本的な学習態度・生活態度を育むことが大切」といった一般論では終わらず、それを英語授業という場において実現する具体的な手立てとして「訳読式」を位置づけています。この点において本書の記述は平明な書き方ながら重厚な内容を持つものです。

日々授業を行なっている英語指導者の実感に即した視点で具体的に語りつつ、個々の活動や指導言の背景にある授業全体のシステムが見え、深い思考を促されるという点で、本書はひじょうに完成度の高い著作になっていると思います。

ちなみに明治図書による英語教育書といえば、以前は具体性や簡潔性を重んじるがあまりに著者の哲学や授業全体のシステムといった側面が手薄になりがちなきらいがあったように思うのですが、最近出版されるものは本書にしても『英語の学力向上策』(大北修一.編著)にしても、実践的に哲学的・体系的な著作といえ、個人的には今後の動きにたいへん注目しているところです。

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