夕凪亭閑話 2007年3月    Crystal top へ。

2007年3月1日。木曜日。晴れ。 旧暦1・12 きのえ うま 一白 赤口

 三月になりました。暖冬の影響で,もう既に充分春です。

 「日本国現報善悪霊異記 中巻」「十一 罵僧・・・」

 妻が参詣して懺悔しているところへ夫の悪人が押し寄せ,僧を罵り,妻を犯し,蟻に食われて死んだという話。

 「十二 贖蟹蝦命・・・」

 山城国の女が子供が蟹を焼いて食べようとしていたので,衣服を与えて買い取り放生した。また蛇が蛙を飲んでいたので,妻になると約束して蛙を放生した。蛇が約束の履行を迫ってやってきたとき,蟹が蛇を切り刻んで事なきをえた。中巻第八と同じ内容である。どちらも蛇の妻になると約束をして破るということになるが,嘘をつくことの悪については問わないのが,不思議だ。

 「十三 生愛欲恋吉祥天女像・・・」

 吉祥天女の像に愛欲を感じて夢で交接するが,その証拠が残り,里人に知られるが,隠さない。その後なりゆき書かれてないが,深く信ずればかなえられぬことはないと,書かれている。これも以前にあった話。結末未詳。

 月が変わったので,テキストについて記します。小学館の日本古典文学全集6「日本霊異記」(中田祝夫 訳・校注)。旧版の赤い装丁のものです。白の装丁のものは新版で,新編・・・です。

 新潮文庫「ローマ人の物語6 勝者の混迷  上」 序章 

 いよいよ六冊目,単行本では三冊目に入ります。その次がカエサルでやや楽しみなのですが,順序通り読むことにしましょう。

 序章は,もっぱら盛者必衰という,あの平家物語でお馴染みのキーワードが語られます。ローマ人の物語は,いわゆる軍記物語の体はとっておりませんが,二巻がハンニバル戦記で軍記物的感じでしたから,当然といえば当然でしょうか。そしてローマ帝国も例外ではありません。ローマ帝国の歴史は衰亡史のほうが有名ですから,このあたりから盛者必衰の基底音を鳴らしておくのが,いいのかもしれません。

 

2007年3月2日。金曜日。晴れ。 旧暦1・13 きのと ひつじ 二黒 先勝

 今日も暖かかった。17℃くらいには,なったのでしょうか。夜になっても気温はそんなに下がらず,十三夜の月に雲の傘がかかっておりました。明日は雨でしょうか。メダカのエサを買いに行ったら,メジロのエサというのがあったので買ってきた。勿論,飼ってはいない。庭に来るメジロに与えるためだ。果たして,喰ってくれるか。

 「日本国現報善悪霊異記 中巻」「第十四 窮女王帰・・・」

 互いに宴席を儲けあう友達づきあいをしていた皇族の中で貧しい内親王がいた。自分が招待する番になっても何もないので困り果て,吉祥天に拝むと,乳母がたくさんのご馳走をもってやって来て,招待したみんなを喜ばせた。この乳母こそ吉祥天であった。

 「第十五 奉写法華経・・・」

 法華経を写して,死んだ母を供養するために,最初に出会った僧を連れてくるように使いの者に言うと,乞食僧を連れてきた。乞食僧は辞退するも留めおかれた。翌日の供養では,前の夜に夢にその母親が牛になっているという話を披露した。

「第十六 依不布施施・・・」

 裕福な家の使用人が,隣りの貧しい老人への飯の施しを拒み,また牡蛎を放生した。死んでいる間に不思議なことを体験する。助けられた牡蛎が,老人への行為で惨殺されるところを救い,甦るという話。

 新潮文庫「ローマ人の物語6 勝者の混迷  上」 第一章 グラックス兄弟の時代 兄の死まで 〜p.68

  高校の世界史で習ったグラックス兄弟の改革である。なぜ改革が必要か。貧富の差が拡大したからである。貴族と平民との対立を止揚していた筈のローマにおいておや。平和な時代が長く続けば,いや戦争の時代でも,必ず富める者と貧しき者が生じる。同じ条件でスタートしてもちょっとした偶然で,すぐに差が生じる。その差が原因となり,次の差の必然となる。時に逆転の場合もあり得るが,持てる者はさらに富み,貧しき者はさらに貧しくなるという,マタイ伝のようになる。

 「これは,平等を期した改革案ではなく,公正を期した改革案である。」(p.52)

 

2007年3月3日。土曜日。晴れ。 旧暦1・14 ひのえ さる 三碧 友引 ひなまつり

 今日も暖かかった。午前中,少し楚映えたが・・。(こういう表現分からないと思います。)今日は,庭に来るメジロを何度も眺め,結構楽しんでおりました。昨日作ったエサは少し喰ったようです。残りはきれいに猫に喰われてしまった。

 「日本国現報善悪霊異記 中巻」 「第十七 観音銅像及鷺形示・・・」

 盗まれた観音の銅像が鷺の形になって,そのありかを示したという話。

 「第十八 呰読法花経僧・・・ 」

 法華経をつねづね読んでいる僧の口まねをした男の口が歪み,死んでしまったという話。上巻十九話と同じ。

 「第十九 憶持心経女現至・・・」

 般若経を美しい声で読む女が急に死んだ。閻魔宮で閻魔大王が美しい声で読むのを所望したので,読んだら感動した。生き返り,以前写経して供養しないまま盗まれていた経に再会し,供養した。

 新潮文庫「ローマ人の物語6 勝者の混迷  上」 第一章 グラックス兄弟の時代 

 後半は,弟の方の活躍です。しかし,弟もまた道半ばで,いや半ばまでいかぬうちに倒されてしまいます。まさに衆愚政治です。

 

2007年3月4日。日曜日。晴れ。 旧暦1・15 ひのと とり 四緑 先負

 今日はすごい天気だった。二〇℃を越えたと思われます。めじろが蜜柑を啄むのひねもす眺めておりました。

 「日本国現報善悪霊異記 中巻」 「第二十 依悪夢至誠心・・・」

 娘の母親が,地方官の夫とともに地方へ行っている娘の悪い予感を夢に見て,衣服を売って読経してもらった。その頃,娘の家では庭で遊んでいる子供が屋根に七人の僧がいると言って母親を家から外へ呼び出す。母親が外へ出たところで壁が崩れ,この屋根の上の七人の僧に命を救われたという話。

 「第二十一 攝(ホントウハヘン)神王・・・」

 粘土の執金剛神の像をを拝んでいると脛(はぎ)の部分から光が放たれだしたという話。

 「第二十二 仏銅像盗人所・・・」

 馬で通りかかった人が,痛い痛いという声を聞き,探してみると,盗まれた仏像が壊されるところだった,という話。

 「世界の名著」16 マキアベリの「政略論」(永井三明訳) 第一巻 第7章「国家において自由を保護するには弾劾権がいかに重要であるかについて」 

 市民にとっての「はけ口」としての弾劾権の必要を説く。それがない場合は,不必要な暴力事件に発展したり,海外からの軍事行動を誘発したりする。しかしまた,この弾劾権には落とし穴があり「中傷」という弊害がでてくる。

 

2007年3月5日。月曜日。雨のち晴れ。 旧暦1・16 つちのえ いぬ 五黄 仏滅

 花落つること知る多少ぞ,という感じの嵐であった。山茶花の花が夥しく落ちていた。昨日掃除したばかりなのに。しかし,日中は気温がまたまた上がったようで,春の気配いよいよ濃厚である。

 「日本国現報善悪霊異記 中巻」 「第二十三 弥勒菩薩銅像盗人所・・・」

 騎馬の巡察官が痛い痛いという声を聞き,行ってみると弥勒菩薩像が盗人によって盗み出され壊されるところであったので,盗人を捕まえたという話。前話とほぼ同じ内容。

 「第二十四 閻羅王使鬼・・・」

 寺から金を借りた商人を閻羅王の使いが捕まえにきたので食料や牛をやって,取引をし,金剛般若経を奉じて事なきをえた。

 「第二十五 閻羅王使鬼受・・・ 」

 前話と同様,閻羅王の使いに食事を与えると同姓同名の別の女を連れて行ったが,別人であると見破られ,改めて連れて行かれた。始めに連れて行かれた女はこの世では火葬され身体が亡くなっているので,後に連れて行かれた女の身体に入って戻るが,自分の家ではないという。両家はこの話に納得し,この女は双方の財産をもらった。

 日本の名著22・司馬江漢「春波楼筆記(抄」より「無欲は美徳か」から「当代の仏像」

 司馬江漢は徒然草が好きだったらしく,いくつか似たような話が出てくる。そしてこれらの短文もいかにも随筆に値する折節の感想である。ただ,兼好よりは時代ははるかに後になり,視点も広がっているうえに,さらに蘭学を修めただけに発想も自由で愉しい。

 

2007年3月6日。火曜日。晴れ。 旧暦1・17 つちのと い 六白 大安 啓蟄

 寒い啓蟄だった。既に這い出ていた虫たちも少し後戻りしたことでしょう。

 「日本国現報善悪霊異記 中巻」 「第二十六 未作畢仏像・・・・」

 梨の木の橋を渡ると「嗚呼,痛く践むことなかれ」という声がする。よく見ると,その木は仏像の作りかけだった。

 「第二十七 力女示・・・」

 力持ちの女の話。夫の服を国守が取ったので取り返す,船頭が侮辱したので舟を陸に揚げるという二話。面白いのは,以前の説話と関連した人物で話が続くところである。

 「第二十八 極窮女於丈六・・・」

 貧乏に窮した女が大安寺の丈六釈迦仏に熱心に祈願をしてお願いをしていると,お金を授かり後裕福になったという話。

 「第二十九 行基大徳放天眼・・・・」

 元興寺の法会で行基が女の猪の油を髪つけているのを臭いで悟り,「彼の頭に血を蒙れる女は,引き棄てよ」という。行基が文殊菩薩の化身だということを示す説話。

  新潮文庫「ローマ人の物語6 勝者の混迷  上」 第二章 マリウスとスッラの時代 (〜p.142)

 スッラが出てくる前までの,マリウスの活躍。ガイウス・マリウスというあまり有名ではない人物の話である。グラックス兄弟ほどの名門の生まれでもない男が,グラックス以上の働きをする。それも政敵を作らずに。これはやはり謎に入る部分であろう。政治家として抜群の能力をもっていたのかというと,外交では,次に出てくるスッラに任すのだから,そうでもないようである。結局,この人のことは読んでいてもよくわからない。

 

2007年3月7日。水曜日。晴れ。 旧暦1・18 かのえ ね 七赤 赤口

 少し寒い日でございました。これではなかなか桜も咲きません。寒桜ではないかと思われますが,咲いていて,メジロが密を吸いに来ております。

 「日本国現報善悪霊異記 中巻」 「第三十 行基大徳携子女人・・・」

 行基の説法を聞く子供を連れた女がいる。子は十歳を過ぎても歩くことはできない。その子が泣き騒いで説法が聞き取れない。行基がこの子を淵に捨てよと言う。この女が前世で借りを返さなかった。貸し主が後世にこの子供に生まれ代わり負債を取り立てて食うていたのだと明かされる。

 「第三十一 将建塔発願・・・」

 男七十,女六十二で女の子が産まれた。数え間違いだと思うが。赤ん坊は左手を強く握ったままで開かない。美しく育ち,七歳のとき手を開き,「舎利二粒」があった。塔を建てるとこの女の子は死んだ。何故,骨が仏のものであると分かるのか。

 「第三十二 膩用寺息利酒・・・」

 寺が利息つきで貸す酒を借りて返さずに死んだ男が牛になって償いをするという話。話の展開はうまい。

 日本の名著25 渡辺崋山「外国事情書」(佐藤昌介訳)は,外国の地誌をオランダ語で読んで,要点を記したものである。政治体制をはじめとして,大学や軍隊の制度なと,実物を見てもないのだから,想像するしかないのであろうが,よく読んでまとめたものだと感心する。そのせいか,書かれている内容も多岐に渡っておりなかなか興味深い。ロシアで,「不利の地に拠り,仁義を重んずるような外交策をとるのは,実は自国の守備を固めるための手段にほかなりません。」(p.158)とか,イギリスでは,「世界制覇の野望があるように察せられます。」(p.158)という具合である。

 新潮文庫「ローマ人の物語6 勝者の混迷  上」 第二章 マリウスとスッラの時代(後半)

 スッラの登場である。ユグルダ戦で会計検査官として物質調達に腕を発揮して登場する。スッラの活躍の前にマリウスによる軍制改革がある。徴兵制から志願制に変わる。このことが私兵を生みやがて共和制から帝政へと移る原因となる。しかし,共和制ローマに英雄はいらないとスキピオ・アフリカヌスを失脚させた元老院も,マリウスの軍制改革のやがておとずれる弊害については気がつかない。

 さてはなばなしく活躍するマリウスとスッラであるが,戦いが終わって平和が戻ってきたときに,軍政改革の弊害がでてきた。兵隊は基には戻れなくなった。退職金やら失業手当やらがいる。護民官のスッラは強行に法律を作って進んでいく。執政官のマリウスは元老院とスッラの板挟みになって失脚していく。

 あれほどハンニバル戦争を戦ったローマであったが,落ち着けば落ち着いたで,問題は出てくるものだ。市民権とローマ同盟との不具合も露呈さえる。そしてグラックス兄弟が意図したことをせざるを得ないようになる。まことに政治というのは難しいものだ,と改めて,春めいた冬の日に思った。

 後半やや退屈だった,新潮文庫6をこれで終わる。やっと・・・。

 

2007年3月8日。木曜日。晴れ。 旧暦1・19 かのと うし 八白 先勝

 寒い日だったですね。例年ならこれが普通なのでしょうが,2月が暖かかったので,この程度(10℃くらい)でも寒く感じました。

 「日本国現報善悪霊異記 中巻」 「第三十三 女人悪鬼見点・・・」

 この話は難しい。裕福な家に美しい娘がいた。多くの申し込みを断り,結婚していなかった。流行歌が流行る。娘の名前も入っている。ある男はさまざまな品物,美しい絹布をもって求婚して娘は,受け入れる。しかし,頭と一本の指だけを残して娘は食べられていた。

 「第三十四 孤嬢女憑敬・・・」

 みなしごの娘が,観音菩薩にお祈りしたおかげで,ある金持ちの男の再婚の相手となり裕福に暮らしたという話。しかし,彼女の両親は観音菩薩を敬っていたのに早く死んで,家も落ちぶれた。このことの矛盾は記されていない。

「第三十五 打法師・・・」

 宇遅王が法師を打たせた。まもなく王は苦しんで死んだ。法師は天皇に訴えたが,天皇は咎を問わなかった。

 世界の名著66 司馬遷「史記列伝」より「第十七 魏公子列伝」

 信陵君というのは魏の昭王の末子で無忌のことである。家柄はいいのに,身分の低い人たちと分け隔てなくつきあうので,いろいろな食客が慕って集まる。また,信陵君も人材を求めて捜す。それらの人たちとのやりとりが面白い。

 

2007年3月9日。金曜日。晴れ。 旧暦1・20 みずのえ とら 九紫 友引 三りんぼう

 少しだけ暖かくなりました。桜の蕾が確かにおきくなっています。しかし,ここにきて低い気温が続きましたので,例年よりも半月も早いということはないでしょう。20日過ぎになるのではないでしょうか。今後の気象次第ですが。

 「日本国現報善悪霊異記 中巻」 「第三十六 観音木像示神力縁」

 観音像の頸が切れて落ちたが一昼夜後に独りでにもどり,おまけに光まで放っていたという話。

 「第三十七 観音木像不焼火難・・・・」

 観音木像が火事の時に焼けなかったという話。

「第三十八 因慳貪成大蛇縁」

 強欲な僧がお金を貯めて,そのお金を守ろうとい妄執から,死後毒蛇になった。そのお金で供養した。

 最近の読書から。田中美代子「三島由紀夫 神の影法師」(新潮社)を読んでみました。作品の生まれた背景を,作者のその時点での精神的状況から読み解くという,文芸評論の大道を行ったものです。作品論でも作家論でもないわけですが,その分析は鋭利で多くの読者が納得できるものでしょう。また,作品の背景をなすエッセー等の資料の選択も新しく,立派な研究です。特に初期作品の構造と晩年の創作理念との照応はよく記述されていると思います。

 

2007年3月10日。土曜日。晴れ夜小雨。 旧暦1・21 みずのと う 一白 先負

 毎日気温の差が激しいようです。今日はあたたかった。山のほうへ散歩してみると,鶯が大きな声で囀り,桜の蕾が大きく膨らんでいます。夕方から小雨で,この雨で開花が早まるかも知れません。

 「日本国現報善悪霊異記 中巻」 「第三十九 薬師仏木像・・・」

 大井川の近くの砂の中から「我を取れ」という声がするので掘り出したら薬師仏の木像がでてきた。耳が無かったので修理し,お堂を造り安置した。霊験あらたかでよく願いをかなえてくれる。

 「第四十 好於悪事・・・」

 橘奈良麻呂は残忍で狐の子を串刺しにして殺したりしていたので,復讐されまた嫌疑を受けて殺された。

 「第四十一 女人大蛇・・」

 裕福な家庭の娘が蛇に犯されたので薬を使って蛇を殺し蛇の子も出した。その三年後また蛇に犯され死んだ。

 「第四十二 極窮女・・」

 極めて貧しい女が千手観音に願ったらお金が届けられたという話。

 以上で「日本霊異記」中巻が終わった。

 新潮文庫「ローマ人の物語7 勝者の混迷 下」 第二章 マリウスとスッラの時代(承前)

 「勝者の混迷」はまた,「読者の混迷」でもある。マリウスとスッラ。ともに改革を熱意をもってすすめるがどちらが正しいのやら。軍事クーデターで権力を握るスッラは,もはや共和制ローマの政治家ではない。そのスッラは遠征中に追放されるが,ひるまない。最後はローマに返り咲き,復讐をして,権力を再び握り,改革を断行する。そしてすぐに権力を放棄し,隠居する。欲のない男である。その人気は死後の元部下たちの弔いに顕れている。

 

 

2007年3月11日。日曜日。晴れ。 旧暦1・22 きのえ たつ 二黒 仏滅

 すっかり春の日差しなのに,冷たい風に当てられて震えておりました。庭にある桜(ソメイヨシノではない)が少しばかり花をつけておりますが,開花が進みません。

 日本霊異記はいよいよ下に入ります。ここで気分転換をしようと思っていたのですが,そちらへ熱中すると,こちらが中途半端になりますから,続けて読むことにします。

 「日本国現報善悪霊異記 下巻」 「第一 憶持法花経者・・・」

 法華経をいつも唱えていた人が死んで髑髏になっても舌だけは腐らず,経を読んでいた。

 「第二 殺生物命・・・」

 病人には狐が取り憑いて起こることがある。前世に狐を殺した病人が狐に取り憑かれて死んだ。そして犬に生まれ代わり,僧に憑いた狐に復讐して殺す。

 「第三 沙門憑願十一面観音・・・」

 大安寺の僧が寺の基金を使い込んで初瀬の十一面観音へお祈りすると船の親王が事情を聞いて返済してくれたという話。

 

2007年3月12日。月曜日。晴れ。 旧暦1・23 きのと み 三紺 大安

 今日も寒い一日でございました。北のほうは寒気の影響で荒れているようです。ネット上で雪の彦根城の写真を見て,さすがに天下の名城だけあってその勇姿はすばらしいと思いました。

 「日本国現報善悪霊異記 下巻」  「第四 沙門誦持方広大乗・・・」

 婿に金を貸し返金を求めた僧が船から沈められるが方広教典をいつも誦していたので死ぬこともなく生還するという話。

「第五 妙見菩薩変化示・・」

 妙見菩薩の備え物のお金が無くなった。そこには鹿の死体があった。死体を捨てにいくと無くなっていたお金になって犯人を示したという話。

「第六 禅師将食魚・・・」

 高僧の求めに弟子が魚を買って帰る途中,魚は法華経になり,高僧の前では魚になって,高僧は魚を食べた法華経の功徳に感心した話。

「第七 被観音木像・・・」

 妻が観音の木像を作って供養したので,死罪を受けても,流罪にかわった。

「第八 弥勒菩応・・・」

 金持ちが瑜伽論を写経しようとしてしないうちに落ちぶれ,山寺に行き修行をすると弥勒菩薩が顕れた。

 新潮文庫「ローマ人の物語7 勝者の混迷 下」 第三章 ポンペイウスの時代 p.102まで

 スパルタクスの乱の話が始まるので,それまでのところをまとめておきたい。

 スッラ死後に何が起こるか。スッラ体制の崩壊であるということは言うまでもない。ただ,それがどのような人たちによってもたらされたかというところに,歴史的な意味がある。反スッラ派ではなく親スッラ派の人たちによってである。すなわち,そうならざるを得ないというところまで,ローマの体制は病んでいたということである。それはさておき本章の主人公はポンペイウスであう。前例のないほどの出世によって司令官になったポンペイウスは,スペインにセルトリウス戦役を集結させる。ハンニバル戦役以降,ローマは強大になり富を貯え,と同時に階層格差が広がり,種々の矛盾が露呈されているのである。

 

2007年3月13日。火曜日。晴れ。 旧暦1・24 ひのえ うま 四緑 赤口

 少し暖かくなりましたけど,風は冷たいようです。もくれんの花がまもなく咲くでしょう。

 「日本国現報善悪霊異記 下巻」 「第九 閻羅王示奇・・・」

 藤原広足は病気になって死ぬが再び甦る。死んでいる間は,閻魔庁に連れて行かれた。法華経を写経して供養したいというと許されて生き返り多くの功徳を積んだ。

 「第十 如法奉写法華経・・・」

 火災にあったが,写経してあった法華経だけは燃えなかったという話。

 「第十一 二目盲女人・・・」

 盲目の女が薬師仏の木像に祈願したところ両目が見えるようになったという話。

 「第十二 二目盲男敬・・・・」

 盲目の男が薬師寺の前で千手観音の日摩尼手を唱えて,日夜祈願したら両目が見えるようになったという話。

 新潮文庫「ローマ人の物語7 勝者の混迷 下」 第三章 ポンペイウスの時代 p.103から

 有名な,映画にもなった「スパルタクスの乱」の話がある。これまでローマの陽の部分が中心に述べられていたが,陰の部分も肥大化していたことを知る。奴隷の反乱というのはスパルタクスの乱だけで,他になかったということで,ローマの奴隷制がギリシアの奴隷制に比べて遙かに開かれたものであったということがわかるが,映画でもわかるように,拳闘奴隷がいるということ自体が,その社会のいびつさを示している。そのいびつな社会への良心からの修正の試みがグラッグス兄弟であったわけであるが,その後も,政治の常で,自ら勝ち得た特権は善意から放出されぬもので,凄まじい権力闘争になるのである。それでも,何度も書くが,共和制ローマを維持するための故人の突出を防ぐ行為が何度か出てくるのには,政治家の中の信念を見ることもできる。しかし,大帝国になると,いつまでも小さな国家ローマのときにできた共和制で押し通すわけにはいかなくなったのであろう。

 しかし,遠くアジアまで属州または同盟国家にしてしまったポンペイウスの仕事は偉大である。では,なぜそれ以上にカエサル(シーザー)が偉大なのか,それが次巻からの話のようだ。

 前にも書いたが,「勝者の混迷」は「読者の混迷」でもあり,プチヒーローの事跡を追うのは疲れるし,羊腸に彷徨う。

 これで,新潮文庫で七冊目,単行本では三冊目を終わる。

 

2007年3月14日。水曜日。晴れ。 旧暦1・25 ひのと ひつじ 五黄 先勝

 今日は昨日より暖かくなるという予報だったのですが,あまり暖かくなかったようです。特に夜になって寒くなりました。エルニーニョが終わったせいもあるのでしょうか。明日からまた天気は下り坂に向かうのでしょうか。

 「日本国現報善悪霊異記 下巻」  「第十三 授写法花経・・・」

 鉄を掘る坑道が塞がって出てこれなくなった男がいた。家族は観音の像を描き写経して供養した。また男は,生きて出られたら法華経を写経しようと誓う。すると助かった。

 「第十四 拍干憶持・・・」

 千手経を唱える僧を迫害した役人が不思議な力で殺された。

 「第十五 撃沙弥乞食・・・」

 乞食僧を責め苦しめた男が翌日黒い血を吐いて死んだ。

 「第十六 女人濫嫁・・・」

 子供をたくさん産んでも,乳を与えなかった女が死んでその報いを受けていたので,子供に知らせ供養した。

 新潮文庫「ローマ人の物語8 ユリウス・カエサル ルビコン以前」 第一章 幼年期 Infantia

  単行本では四冊目。いよいよカエサル物語のはじまりである。これまでのすべてが,カエサル物語のための序章ではなかったか。作者はカエサル物語を書くために,ローマ人の物語をはじめたのではなかろうか。ふと,そんな想像を膨らませるような,ものものしさが,この巻には溢れている。一つ。目次からしてエキサイティングである。二つ。「まえがき」とは記されていない,まえがきの仰々しさ。ひょっとしたら,先行する先の物語よりもこちらのほうが先に書き出されていたのではなかろうか。そんな妄想が生まれてくるほど,エネルギーに満ちた書き出しである。

 輝かしい政治制度であったローマの共和制。大国ローマはその拡大を牽引した制度そのものを自ら変更せざるを得なくなっていたのだ。制度がカエサルを待っていたのか,カエサルが制度を変えたのか。それは,先を読んでみないとわからない。

 栴檀は双葉より芳し,などということはこの章には書かれていない。カエサルの幼年期の,当時のローマの環境が描かれているだけである。それでもけっこう愉しい。作者の熱の入れ方が違うのだ。

 第二章 少年期 Pueritia

 少年期などという懐かしい文字に出会うと,「少年」とか「少年画報」などという往年の宝物を思い出し,世情を賑わしている「おふくろさん」の作者の原作なる,月光仮面だの七色仮面だのを,過ぎ去った過去への哀惜とともに思い出すのだが,この章には,何らそういう少年期の夢と憧れが記されている訳ではない。当時のローマ政界の出来事が,カエサルの立場から復習され,多大の影響を与えただろうと,そう読者は思うことを強いられる。そう信じることにする。

 

2007年3月15日。木曜日。雨。 旧暦1・26 つちのえ さる 六白 友引

 時刻は矢の如く飛び去り,早や三月も半ば。春の雨か,はたまた雨の春か,どちらでもいいけれど,寒い,寒いと誰もが思うような雨の一日であった。

 「日本国現報善悪霊異記 下巻」  「第十七 未作畢捻・・・」

 作りかけの土の仏像が痛い痛いというので,みんなで完成させた。

 「第十八 奉写法花経・・・」

 法華経の写経師が写経していた女を襲い,死んでしまったということ。

 「第十九 産生肉団之作・・・」

 卵形の肉塊で生まれが,七日で卵を破って女がでてきた。顎がなかったが賢い子で,七
歳になるまでに法華八十華厳を読んだ。尼になった。その尼をねたんだ僧は死ぬ。後,僧
も俗人もこの尼に帰依した。

 「第二十 誹奉写法花経・・・」

 法華経を写経している女に,その誤りを非難すると,非難した男の口がゆがみ,顔が曲
がって治らなくなった。

 「第二十一 沙門一目眼盲・・・」

 薬師寺の僧の片目が見えなくなったので,多くの僧を呼んで三日三晩に渡って金剛般
若経を読むでもらうと治った。

 新潮文庫「ローマ人の物語8 ユリウス・カエサル ルビコン以前」 第三章 青年前期 Adulescentia

 独裁者スッラと反対の立場にあるカエサルは,追われる。しかし,果敢に辺境の地にあって泳ぎ回るところは,やはり記録には残っていないとはいえ,第一級の人物だったということが伺える。そしてまたそれを支える「家臣団」のようなものが存在したのだろう。家庭内奴隷とはまた違った形での。

 ロードス島に行く途中で海賊を征伐したり,それから留学したり,軍隊に入ったりと,将来に備えて確実に力を蓄えていく。  

 

2007年3月19日。月曜日。晴れ。 旧暦2・1 みずのえ ね 一白 友引

 ご無沙汰でございました。16日から三泊四日で,つくば市へ所用で行っておりました。あの,つくば科学博のあったつくばです。科学博以来ですから二十・・・年ぶりということです。今日帰ってきました。明日からまた普通の日常生活に戻すつもりでございます。

 

2007年3月20日。火曜日。晴れ。 旧暦2・2 みずのと うし 二黒 先負

 日常生活に戻すということは,寒いだの暖かいだの,と言いつつ,時の流れを見送ることである。東京ではソメイヨシノが咲いたという。こちらでは,まだ咲かない。とはいえ,明日県境の小学校のほうへでも行ってみれば,咲いているかもしれない。桜の頃は夜は冷え冷えとするのは例年のことだが,今夜も寒い。

 例によって例の如く「日本国現報善悪霊異記 下巻」 「第二十二 重斤取人物・・・」

 二種の秤を用いて物を貸して暴利を貪っていた男が閻魔大王のところに連れて行かれるが,法華経を写経したということで罪を軽くしてもらった。

 「第二十三 用寺物復将・・・」

 寺の物を私用した僧が閻魔庁に連れて行かれたが,大般若経を写経しようという願を立てているので,罪を減じられた。

 「第二十四 依妨修行人・・・」

 仏道の修行者の数を制限したので,生まれ変わって猿となった,という話。

 新潮文庫「ローマ人の物語8 ユリウス・カエサル ルビコン以前」 第四章 青年後期 Juventus

  政治家カエサルが,派手ではないが確実にキャリアを積み重ねていく。借金をしながら,かつスキャンダラスに。次期の三頭政治の前が,この章である。共和制ローマというのは元老院といういわば支配階級による共和制であって,初期の王制から変換した頃に比べれば,ローマの規模が巨大化しているから,何かと弊害を含んだ制度になっている。そのひとつが軍制で,業績を上げたからといってローマに帰って権力が与えられるものではない。事態はむしろ逆で,権力の集中を懼れた元老院によって失脚させられる場合が多かった。その最大の理由が,支配階級の権勢の維持でもあった。そのような末期的な制度に果敢に挑戦するのがカエサルで,着々と準備が進んでいる訳ではないが,それでも,政治の階梯を順調に上がっていく。そういう話で,新潮文庫の第八冊目は終わるのである。

 

2007年3月21日。水曜日。晴れ。 旧暦2・3 きのえ とら 三白 仏滅 春分の日

 春分の日ですから当然,二十四節気の春分でもある。暑さ寒さも彼岸まで,とよく言ったもので,次第に暖かくなる。でもしばらくは,石油ストーブは離せられない。昼前に,県境の小学校のほうへ散歩してきたが,鶯はよく鳴いているのに,桜はまだ蕾で,当分咲きそうにもない。

 「日本国現報善悪霊異記 下巻」 「第二十五 漂流大海・・・」

 和歌山で海に流され大木に乗って南無釈迦尼仏と唱えて,無事淡路島まで漂着した。

 「第二十六 強非理以徴・・・」

 裕福な家の妻で,仏道を信ぜず,暴利を貪っていた。死んで七日目に生き返り牛になっていた。

 「第二十七 髑髏目穴・・・ 」

 芦田郡大山里の住人が深津郡の深津の市に行くために芦田の竹原というところで野宿したところ,「目痛し」という声がする。朝起きて見ると,髑髏の目に筍が突き刺していた。抜いて供養すると,髑髏の恩返しがあったという話。髑髏は芦田郡屋穴国の人物だと語る。地名を詳しく写したのは,夕凪亭の近くだからだ。すなわち深津の市は,その辺。といってもわからないだろうから,車で10分程度のところでしょう。大山里,竹原,屋穴国については,注にも,新大系本の注にも不詳とあるだけ。夕凪亭閑人にもわかりませぬ。

 新潮文庫「ローマ人の物語9 ユリウス・カエサル ルビコン以前」 第五章 壮年前期 Virilitas  ガリア戦役三年目 (〜195)

 ローマの歴史は,王制,共和制,帝政と続く。その共和制末期の三頭政治というのが,カエサルの権力獲得の第一歩である。しかしローマにずっといるのではない。辺境の地に司令官として赴任している。ガリア地方,すなわち今のフランスである。そこでゲルマン人を相手に戦う。その時の記録が「ガリア戦記」だ。著者はカエサル。その「ガリア戦記」の三年間である。 

 

  2007年3月22日。木曜日。晴れ。 旧暦2・4 きのと う 四緑 大安

 彼岸を過ぎたせいか,春の季節そのものです。その光に誘われて,庭に出て,メダカ池の縁をセメントで高くしたりしています。

 「日本国現報善悪霊異記 下巻」 「第二十八 弥勒丈六仏像・・・」

 和歌山の貴志寺に優婆塞が泊まったとき「痛きかな,痛きかな」という声がする。朝よく見ると,仏像の首が切れおちていた。

 「第二十九 村童戯剋木仏像・・・」

 子供達が戯れに木の仏像を作り,供養のまねごとなどをして遊んでいた。それを愚かな男が斧で切った。間もなくその男は無惨な死に方をした。

 「第三十 沙門積功作仏像・・・」

 老僧が十一面観音の木像を造りかけで亡くなった。生き返り,檀家の有力者に像の完成を頼んで,大往生したという話。

 新潮文庫「ローマ人の物語9 ユリウス・カエサル ルビコン以前」 第五章 壮年前期 Virilitas  ガリア戦役四年目 (〜235)

 この年はライン渡河に続いてブリタニアへの渡航があります。はるかローマを離れて異郷の地にあって更に海を越えてイギリス本土へ渡ろうというのです。それも敵ばかりいる島へ戦いに行くのです。文字通りの背水の陣で,負けて帰れなくなるという恐怖が先に立たなかったのでしょうか。そこが二〇〇〇年後もその著作が読まれるだけでなく,その人についても書かれる人と,凡人の違いでしょうか。そんなことも全て配慮しているのですから,凄い能力です。更に,カエサルの凄いところは,用意周到にプラスして,諸処において瞬時に的確な判断を下し,あっという間に行動することでしょう。まことに類稀なる人物です。

 また,この節では,最愛の部下クラックス青年と別れます。二度と会うことがなかったとか。そしてこれまた最愛の生母アウレリアの死の知らせを受けます。帝王切開でカエサルを産んだということは,このローマ人の物語ではまだ出てきませんが,「カエサルが帝王切開で産む」ということは,常識的に考えなくてもありえないことでしょうから,「帝王切開によって産まれた」と思うほうが素直だと思います。その母が亡くなりますが,辺境の属州総督のカエサルはローマに帰るわけにはいきません。

 

2007年3月23日。金曜日。晴れ。 旧暦2・5 ひのえ たつ 五黄 赤口

 昨夜,今日とすっかり暖かくなって,春になりました。広島ではソメイヨシノが開花したとか。縮景園の標本木です。あのあたりの川には海水が登ってきますから,海抜百メートルあまりの夕凪亭のある処よりは暖かいのでしょう。こちらは,まだです。

 「日本国現報善悪霊異記 下巻」 「第三十一 女人産生石・・・」

 処女が懐胎して石を二つの産んだ。この石は成長して大きくなった。祭壇を設けて祭った。

 「第三十二 用網漁夫値海中難・・・」

 漁師が大風に遭い難破した。「我が命を済ひ助けたまはば,我が身を量べて,妙見の像を作くらむ」と念じると,溺れず助かった。

 「第三十三 刑罰賤沙弥乞食・・・・」

 食を乞う自度僧に暴力を振るった生まれつき悪い性格の男が,ほどなく死んだという話。

 「第三十四 怨病忽嬰身・・・」

 急に瘤のような腫れ物が首にできた女が,善を行って治そうと決心し,髪を切り大谷堂に籠もって般若心経を唱える生活を送った。十五年後に修行者が来て一緒に堂に住んで願を立てた。病気になって二十八年後に急に治った。

 「第三十五 仮官勢非理為・・・」

 後に生き返る男が地獄で,生前職権を利用して悪徳を働いた罪で,責め苦を受けている古丸という男に法華経を写経して救ってくれと頼まれた。生き返った男は,自分で写経せずに太宰府に申告した。太宰府は朝廷にまで上申するが却下された。二十年後に上申書が発見され大法要会が行われた。

 「第三十六 減塔階・・・」

 太政大臣藤原永手は,法華寺の鐘を壊したり,西大寺の塔の柱を変えたり,五層に変えたりしたので,死後地獄に落とされたという話。構成に大変興味深いものがある。まず永手が生きているうちに子供の夢に父が兵士に召還されることが出る。そして永手は死ぬ。また,永手が地獄で責め苦にあっているところに煙が出てくる。この煙は息子の病気祈祷の煙である。その煙を見て閻魔大王は永手を許し,現世へ追い返す。しかし身体は失われているので霊魂は,病気で口も利けない息子に乗り移って永手の事情を話す。地獄と現世の空間的隔たりがない。

「第三十七 不顧因果作悪・・・・」

 京の人が筑前に行ってすぐに死ぬ。地獄で佐伯伊太知が現世での善行の数よりも悪行の数が多いので許してもらえないということを知り,生き返ってから太宰府に届ける。太宰府では相手にしてもらえないので,京に帰り佐伯の家族に報告した。家族はさらに供養したので伊太知の苦役は救われた。

「第三十八 災与善表相・・・」

 善いことも悪いことも起こる前に前兆があるものであると,説く。輯中最も長い本編は前半は巷の流行歌が予兆をなすことを示し。後半は自然界の種々の現象が予兆をなすことを示す。

「第三十九 智行並具禅師重・・・・」

 いよいよ最終話。熱心に学を修め,ひたすら修行をした僧が生まれ変わって天皇の御子として生まれた。しかし,どういう訳か三年ばかりで亡くなる。また同じようなことがおこるのだが,こちらは「わたしは死後二十八年の後に,国王の御子に生まれて,名を神野というだろう・・・」と言って死ぬのだが,生まれた本人が名前を言うことはありえまいから,おかしい話だ。・・・・ということで,何はともあれ,日本霊異記を終わりました。

 新潮文庫「ローマ人の物語9 ユリウス・カエサル ルビコン以前」 第五章 壮年前期 Virilitas  ガリア戦役五年目

 46歳のカエサルは再びブリタニアを目指す。今回は輸送船六百隻,ガレー型軍船二十八隻という大がかりなものだ。しかし,出発に当たってガリア人の後顧の憂いを除いておかねばならないという課題もあった。それやこれやして,渡海する。今回は,敵が大量の船団に恐れをなして退却していたので,難なく上陸できた。そして奥深く侵攻するが,停泊した船が嵐に遭い被害を被った。カエサルは船を更に陸に上げ囲ってから,再び遠征に出る。ゲリラ戦に対して緻密な作戦でまたもや勝ち進む。さらにテームズ河を渡る。そして部族間の分裂を誘い,降伏させる。人質と年貢金を取り康和する。そして引き上げる。しかし帰ったガリアは小麦が不作で四万五千の兵士の食糧としては不足だった。そのため例年と異なり分散して冬営せざるを得ない。しかしその1つがエブロネス族の陰謀に遭い九千人が死んだ。その隣りも同様に壊滅する。しかし,やっとカエサルのもとにそれらの情報が届くと,カエサルの行動はいつものように迅速果敢だった。そして圧勝。

 以上で,新潮文庫の九冊目が終わる。

 

2007年3月24日。土曜日。雨。 旧暦2・6 ひのと み 六白 先勝

 生憎の雨である。残念。春の雨を喜んでいるのは,メダカと金魚だけである。昨年から成長した大きい金魚は,先日買ってきた小さい金魚の尾ばっかり追っております。ああいうのをロリコンというのでしょうかねぇ。

 さて,日本霊異記が終わったので,次は何にしようかと思っていたのですが,短いのが気楽でいいと思いますので,宇治拾遺にすることにしました。テキストはやはり小学館の日本古典文学全集の28巻,「宇治拾遺物語」(小林智昭校注・訳)です。新編ではなく,古い赤いほうです。大納言隆国が宇治に引きこもって多くの人に話をさせ,寝そべって記録していったという,なかなか趣味のよい人の記録や作になるもので,さらに後世の補訂もあったようです。ということで,ぼちぼちと読んでいくつもりですが,急ぎませんので,夏の暑さが遠のき秋風が吹く頃までに終わっていたらいいことにして始めることにいたしましょう。

 「宇治拾遺物語巻第一」「一 道命和泉式部の許に於いて・・・」

 好色の僧が和泉式部のところで法華経を読んだら,五条道祖神が来てありがたがったの
で,いつも読んでいるのになぜ今日のがありがたいのかと問うと,いつもは身を清めてお
読みになるので梵天,帝釈天などがお聞きになって自分は聞けないが今日は聞けたと語ら
る笑話。

 「二 丹波国篠村平茸生ふる事」

 丹波の国篠村には平茸がたいへんよく生えて,食していた。ある年,突然平茸は出なくなった。前の年の夢に多数の法師があらわれて暇乞いをした。平茸は不浄の身で説法をした法師の生まれ変わりであったのだ。

 「三 鬼に瘤取らるる事」

 よく人口に膾炙した瘤取り爺さんの説話である。ストーリーは幼い頃聞いた童話と全く同じで,それだけ,本時点で完成されていたということである。

 「四 伴大納言の事」

 伴大納言絵詞でお馴染みの大納言善男は佐渡の郡司の召使いであったころ,東大寺と西大寺を跨いで立ったという夢を見た。妻に話すと股を裂かれるのだという。郡司に話すと善い夢を見たので将来高位になるであろう,しかしつまらぬ者に語ったので罪も受けようと言った。結果から作られた話であろう。その考え方は日本霊異記に通底する。

新潮文庫「ローマ人の物語10 ユリウス・カエサル ルビコン以前」 第五章 壮年前期 Virilitas (承前) ガリア戦役六年目 

 カエサル四七歳,紀元前53年のガリア戦役六年目は,十個軍隊にまで増やして,ガリ
ア北東部での戦いである。さらに二度目のライン渡河が行われる。しかし,カエサルはゲ
ルマン民族の深追いはしない。威嚇にその目的があったからである。そして引き返したカ
エサルはガリア北東部の制圧に勤める。一方,オリエントでは,三頭政治の一人クラック
スが,無謀にもパルティアに挑み無惨な敗北を帰して死ぬ。不安定ながらもローマではポ
ンペイウスの一人執政官体制で行かざるを得ない。

 2冊とも新しい本に入ったのだから,ぱーっと華やかに書けばよかったのですが,どうも退嬰的でいけません。雨のせいでしょう。世間ではまだ宵の口であろうとおぼしき時刻だが,嗚呼眠い。

 

 2007年3月25日。日曜日。晴れ。 旧暦2・7 つちのえ うま 七赤 友引

 よいお天気になりました。気温は20℃くらいに上がったようで,4月の陽気です。陽の光を直接浴びると暑いようでした。・・・それから,桜も咲き始めました。よく膨らんだ蕾の中に何個か,開いていました。咲き始めの蕾というのは,結構エロティックなものですね。当たり前ですが・・・。

 「宇治拾遺物語巻第一」 「五 随求陀羅尼額に籠むる法師の事」

 食を乞った法師の額に傷があるので聞くと,陀羅尼を籠めたものだといった。真実を知っている男が,間男をして夫に鍬で打ち破られたとばらすと,その時に籠めたのだと言ったのでみんな笑った。

「六 中納言師時法師の玉茎検知の事」

 煩悩を切り捨てたと偽る法師が見破られた。「狂惑の法師にてありける。」という感想が添えられる。

「七 龍門の聖鹿に代わらんとする事」

 龍門の聖が知り合いの男が鹿射をやめないので,鹿の毛皮をまとって殺されるつもりでいたがばれて殺されなかった。男は後悔して仏門に入った。

 新潮文庫「ローマ人の物語10 ユリウス・カエサル ルビコン以前」 第五章 壮年前期 Virilitas (承前) ガリア戦役八年目。

 ガリア戦役八年目はカエサルが書いたのではない。従って不十分である。カエサルの戦後処理がなされる。そして長いガリア遠征が終わる。

 

 2007年3月26日。月曜日。晴れ。 旧暦2・8 つちのと ひつじ 八白 先負

 せっかくの春の日を無為に過ごした。昨日値千金の春宵の一刻を窓を開けて楽しんでいたら,いつの間にやらうたた寝をしていたらしい。風邪をひいてしまった。喉はがらがら,頭はがんがん,咳はこんこんで,最悪の一日であった。生老病死とはよく言ったもので,生きことの苦行は何も太宰治の特権ではなくて,その辺ににごろごろしているのである。梅干し,アロエ,蜂蜜の三種の神器も今回ばかりは薬効なく,早々にかかりつけのお医者さんのところへいって注射と薬をもらってきた。やっとおきれるようになったが,またまた朦朧としてきだした。 

 「宇治拾遺物語巻第一」 「八 易の占いして金取り出す事」

 女一人住んでいるいるところに旅人が泊まった。翌朝,女は旅人に「金千両置いていかねば出発できぬ」という。旅人が理由を尋ねると,亡くなった夫が千両貸した男が来るので返してもらえと言ったという。旅人は易者だったのでその意味を悟り,柱の中に隠してある千両を指摘した。

 「九 宇治殿倒れさせ給ひて・・・」

 宇治殿(藤原頼通)が倒れたとき,実相房僧正を呼びにやると実相房が着く前に護法法師が追い払ったので治った。これほど実相房は偉大だったという話。

 「十 秦兼久通俊卿の許に向かひて悪口の事

 後拾遺和歌集の選者をしていた通俊卿に秦兼久が「去年見しに色もかはらず咲きにけり花こそものは思はざりけり」という歌を示すと,けり,ける,けれはよくないと言った。兼久は「春来てぞ人も訪ひける山里は花こそ宿のあるじなりけれ」という名歌がある。通俊卿はものを知らない人だと言って帰った。そのことを聞いた通俊卿は「さりけり,さりけり。物ないひそ」と言われたという話。

 

 新潮文庫「ローマ人の物語10 ユリウス・カエサル ルビコン以前」 第五章 壮年前期 Virilitas (承前) ルビコン以前

 いよいよ,元老院とカエサルの決戦である。元老院体制破壊を目指すカエサルはまず合法的に執政官になろうとする。それを何としても阻止したいのが元老院派。かつて三頭政治の一人であったポンペイウスは元老院派に取り込まれて,一人執政官体制をしいている。

 執政官選挙に出るには,凱旋式を済ませて一私人に戻って国家公文書館に届けなければならない。ローマの共和制はこういう変な制度で戦功のあった者が執政官になるのを阻止してきた。しかし,軍を解散させると,公職にないので告発されることが起こる。元老院はそれを待っている。それにカエサルは挑戦する。まずガリア総督の任期延長である。それに対する元老院は後任人事で迫ってくる。そこでカエサルの「長い手」が働く。元老院派の後民官クリオを自派に取り込み,後任人事を先送りするよう働きかける。この後の成り行きは複雑なのでここで要約するよりも本文を読んでもらうことにして,首都ローマに向かうカエサルに対して元老院はポンペイウスに軍事討伐を依頼した。これを受けるところがポンペイウスの状況把握力のないところであろう。そしてカエサルの軍団解散を命じる法律が元老院に出される。しかし何度かの護民官アントニウスの拒否権も,ついに元老院最終勧告に負けて,法的にはカエサルが反逆者になってしまった。紀元前49年1月12日。カエサルはルビコン川を渡った。50歳と六か月。賽は投げられた。

 以上で単行本で四冊目。文庫本で十冊目を終わる。

 

2007年3月27日。火曜日。雨。 旧暦2・9 かのえ さる 九紫 仏滅

 春満開となる頃なのにむごい雨である。雨が降ろうと季節は確実に移っている。雨の日でも楽しいはずであるが,昨日来の風邪で不如意な日であった。

 「宇治拾遺物語巻第一」 「十一 源大納言雅俊一生不犯の鐘打たせる事」

 鐘を打って一生不犯の法会を行わせたとき,ある僧が「かはつるみはいかが候べき」と問うた話。

 「十二 児の掻餅するに空寝したる事」

 比叡山で僧たちがぼた餅を作ろうと言ったのを聞いた稚児が,ねたふりをして待っていた。ぼた餅ができて興されたがすぐ起きるのはいかにも待ったいたようで,次に呼ばれるのを待っていたが声がかからないので,「はい」と言って起きたという,今でもありそうな話。

 「十三 田舎の児桜の散るを見て泣く事」

 比叡山へ田舎の児がのぼり,桜の花が散るのを見て泣いていた。それを見た僧が感動して諭し,訳を聞くと,「我が父の作りたる麦の花の実の入らざらん思ふが侘びしき」と言ったのでがっかりしたということ。

 新潮文庫「ローマ人の物語11 ユリウス・カエサル ルビコン以後 上」第六章 壮年後期 Virilitas   〜p.51

実はこの弟11冊目全体が弟6章なのだ。ということでとりあえず51ページまででやめておこう。ルビコン川を渡ったカエサルは,ローマには入らない。ポンペイウスの動きを察して,南進して追う。しかしポンペウスはブリンディシから船で逃げる。カエサルは追えない。反転してローマを目指す。ルビコン川を越えるということは,今流に言えばクーデターである。しかし,古い体制の法律の中で権力闘争をするという,やや理解しがたい面がある。それはさておき,カエサルの行動は迅速でこの時点では決して不利ではない。だが,法律的にはポンペイウスのほうに分があるのは事実である。

 

2007年3月28日。水曜日。晴れ。 旧暦2・10 かのと とり 一白 大安

 春の気配濃厚な一日でありそう。

 「宇治拾遺物語巻第一」 「弟十五 大童子鮭盗みたる事」

 大きな子供が鮭を盗み,捕まっても自分ではないと言い張り,服をぬがされると出てきたのを,「いかなる女御,后なりとも,腰に鮭の一二尺なきやうはありなんや」と言ったのでみんな笑った。あまりおかしいとは思わないが・・・。

 「十六 尼地蔵見奉る事」

 年老いた尼が地蔵菩薩の歩くのを見たくて夜明けに立っていると博打打ちが服をくれたら遭わせようと騙す。しかし尼は服を与えて地蔵が来ると信じているので,その子供が地蔵になって,尼は極楽往生したという話。

 「弟十七 修行者百鬼夜行にあふ事」

修行者が摂津の国の龍泉寺という人の住んでいない寺に泊まった。不動明王を念じていると沢山の妖怪が出て,不動明王を床の下に置いた。朝が来てみると,肥前の国にいたという話。

 「弟十八 利仁芋粥の事」

芥川龍之介の「芋粥」は「鼻」と並んで芥川の代表作だが,芋粥のほうが現実味がある。何の食べものでも腹一杯食べてみたいなあと思うところに良さがあるのであって,腹一杯食べたところでむなしさが残るだけである。そういう心理を描くことにこの話は成功はしているが,短編小説としてはまとまりが欠ける。そこをうまくまとめたのが芥川の手腕で古典的な短編小説ができあがった。 以上で,巻弟一が終わる。

 新潮文庫「ローマ人の物語11 ユリウス・カエサル ルビコン以後  上」第六章 壮年後期 Virilitas  〜p.112

 ポンペイウス軍と戦うカエサルはマルセイユを経てスペインに向かう。苦戦しながらもいつもの機略と迅速な行動で勝つ。ここでは内乱であり,戦う相手もローマ人で,カエサルは自軍は勿論相手も生きたままで勝利するように努力した。

 

2007年3月29日。木曜日。晴れ。 旧暦2・11 みずのえ いぬ 二黒 赤口

 昨日から山口へ行ってきた。昨日は中国道を通って鹿野で降りるとすぐのところにある中国観音霊場台15番の漢陽寺へ行った。清流の流れる見事な庭と建物のある立派なお寺であった。そして泊まりは湯田温泉。今日は下関で所用を済ませ,夕方帰った。ということで,三月は文字通り東奔西走のあわただしい日々であった。

 「宇治拾遺物語巻第二」 「一 清徳聖奇特の事」

 清徳聖は母が死ぬと棺の周りを千手陀羅尼と唱え続けて三年になると,母が仏になったので火葬した。また聖の後には多くの動物がついて来て沢山食べ沢山排泄した。そこが
錦の小路である。

 「二 静観僧正雨を祈る法験の事」

 多くの僧が雨乞いの祈祷をしても効果がなかったとき静観が呼ばれた祈祷すると雨がふった。静観は像都に昇進せられた。

 「三 同僧正大嶽の岩祈り失ふ事」

 比叡山の西の塔に向かっている大岩は龍の口の形をしており,そのせいか西の塔に住むと人が死ぬと言われた。静観僧正が七日七夜祈って岩を砕いたら,人が死ななくなった。

2007年3月30日。金曜日。晴れ。 旧暦2・12 みずのと い 三碧 先勝

 夜来風雨の声である。夜中の雷雨は激しかった。さて夜が明けると見事な春の日で,近くの公園の桜も既に相当咲いている。ただそれを愛でる余裕も無く右往左往している日々である。

「宇治拾遺物語巻第二」 「四 金峯山薄打ちの事」

 金箔打ちが金峯山の金崩れから金をもって帰り箔にすると,箔に「金の御獄金の御獄」とすべてに文字が現れて出所がばれてしまったという話。

「五 用経荒巻の事」

 処世術にたけた用経が鯛の荒巻を左京の大夫に献じようとして置いていたら,若者たちが中身を取って古草履などを入れていたので,用経が恥をかいたという話。

 

2007年3月31日。土曜日。晴れ。 旧暦2・13 きのえ ね  四緑 友引

 今日もまた早朝より西走してきました。ということで桜の春を楽しむ余裕もなく,日々の生活に精進しております。

 ということで,三月は瞬く間に過ぎ去ってしまいました。良い時候ですから,もっともっと本も読まなければいけないのですが,やや後退気味ながら,これにて三月の夕凪亭閑話を終わる。

 

 



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