第四章
確認は大切


あの日から1週間、怪我もだいぶ治ってきて退院の日取りも決められるくらいになった。 どうやら彼女の言うとおり俺の体は頑丈でかつ回復力が高いようだ。だがこの体ともあと 数週間でさよならだ。なんせあれから俺は、自分にあった棺桶を探し続けていたのだから。

どうせすぐに死ぬと分かっているのだから、オーダーメイドで注文するのも いいかもしれないな。どんな形がいいだろうか。やはりインパクト勝負でエジプトの ミイラが入っているような形にするか。金ぴかに色を付けるとなかなか良さそうだ。 いやいや、ここは冷凍保存してもらって科学がもっと進歩した時代になったら復活 できるようにするという手もあるぞ・・・。ってそんなこと考える暇があったら 少しは逃げだす努力をしようよ、俺。

そんな混乱の一日を過ごしていると、ドアをノックする音が聞こえてきた。 俺が許可を与える間もなくドアが開き、その向こうから死神が現れた。

「なんだその顔は。まるで死神にでも出会ったような顔だな。」

なんと察しのいいことだ。正にその通りですよ。俺はその言葉をかろうじて飲み込んだ。

「もう少しで退院だろう。私からの祝いの品だ、受け取れ。」

そう言うと、彼女は俺に封筒を渡してきた。今までの言動と違い、ファンシーな 封筒だ。デフォルメされたキリンがその可愛さを象徴している。

「なんだこれは。俺へのラブレターか。なんだかんだと言ってやっぱりお前も女の子なんだな。」

「馬鹿かお前は。私がなぜお前にそんなものを渡さねばならんのだ。」

彼女はいつもの調子で淡々と喋っていく。

「なーんだ。つまんね。だったら現ナマぐらい包んでこいよ。」

「その中身が要らないなら返してもらってもいいんだぞ。今のお前にとっては金よりも必要な ものだと思うがな。」

「はー、金より大切なもの。そんなものがあるなら見てみたいものだぜ。」

売り言葉に買い言葉・・・俺はついついそんなことを言ってしまった。

「そうか、ならば事務所の地図が入った封筒は返してもらうぞ。」

お金より大切な物って言われてから気付くものだよNA。俺は早速中身を確認した。 確かに彼女が言ったとおり地図が入っていた。これでしばらくの間、棺桶のオーダーメイドで 悩むことは無さそうだ。そんなことを一人で考えていると、彼女は部屋を出て行こうとしていた。 それに気付いた俺は彼女を呼び止めようとしていた。

「ちょっ」

「そういえばまだ言ってなかったな。私は松瀬鈴音(まつせりんね)だ。」

ドア越しに彼女はそう言った。

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