■私たちの秋田大学憲章
前文
 戦後の新制大学は、戦前、学問の自由が失われる中で、思想統制・教化や軍事研究など、侵略戦争に加担したことへの深刻な反省のもとに出発した。戦後、憲法によって学問の自由が保障される中で大学の学術研究は進展し、地域に貢献するとともに、大学進学率の上昇の中で、数多くの有為な人材を輩出し、地域の教育水準の向上、産業・社会の振興に貢献してきた。
 今日、人類は環境破壊、打ち続く戦争と核の脅威、食料・エネルギー危機など、人類の生存を脅かすような危機にみまわれている。こうした状況の中で、大学は科学、文化の中心として、社会への先駆的、批判的役割を担わなければならない。今大学に求められていることは、民主主義と寛容・相互尊敬を基盤とし、地球環境を配慮した持続可能な社会の発展であり、それを保障する平和の文化の構築に貢献することである。秋田大学もまた、秋田の地域に立脚しながら、大学としての本来の使命を果たすことが求められている。
 ここに、日本国憲法、教育基本法や、ユネスコ高等教育憲章の精神にのっとり、あるべき秋田大学のあり方を明示するため、この憲章を制定する。

 第1章 大学の理念
 第2章 医療
 第3章 地域社会
 第4章 大学運営
 第5章 財政・評価
 第6章 学生
 第7章 教職員
第1章:大学の理念
第1条 @大学は、真理を探求し、学問を教授研究する。
A大学における教育、研究は、世界の平和と人類の福祉、基本的人権、民主主義、地球的環境に資するものでなければならない。軍事に関わる教育研究、生命の尊厳を犯す教育研究は、これを行わない。
B大学は、平等・民主・自由を重視し、性別、人種、学歴、障害、国籍、社会的身分など、一切の差別を排する。
第2条 大学の研究の使命は、歴史的に培われた学問体系を発展させ、さらに新たな領域を切り拓き、社会の持続可能な発展に寄与することにある。
第3条 大学の教育の使命は、民主主義の精神と、科学的で批判的かつ公平な見方を形成し、さらに幅広い教養と高度な専門性を涵養することにある。
第4条 @大学はその機能を十分に発揮するため、学問の自由と大学の自治が保障されなければならない。
A大学の構成員である教職員と学生は、国民や社会に対する責務と説明責任を自覚し、その役割を果たさなければならない。
▲Top
第2章 医療
第5条 @県内唯一の大学病院(特定機能病院)として、高度な医療への県民の期待とその責務を自覚しなければならない。
A地域との連携をはかりながら国民・県民医療の発展に努めなければならない。
第6条 患者の人権を尊重し、安全・安心の医療の提供に努めなければならない。
▲Top
第3章 地域社会
第7条 大学は地域社会の発展と問題解決に寄与しなければならない。
第8条 @大学は、地域の市民、行政、産業、NPOなどと協力し、「グローバルに考え、ローカルに行動する」という原則に従い、その科学的な研究と教育をもって貢献する。
A大学は一部に偏することなく、公正かつ科学的な視点から、地域社会全体の発展を目指さなければならない。
▲Top
第4章 大学運営
第9条 本学の理念と目標を達成するため、大学の自治を大学運営の基本原則とする。大学の自治は、学問の自由を実現するための基本的条件である。
第10条 大学は、この自治権が国民の負託によることを自覚し、真摯に自己を律して適正な自治に務める。この自治を適正に行うために、民主的な学内規則に基づく民主的な運営を行わなければならない。
第11条 @学部の重要事項については、教授会の議を経なければならない。大学は、教授会の自治、部局の自治を尊重しなければならない。
A教授会には、教員全員が平等な立場で参加する。
第12条 教職員は等しく大学の自治の実体を構成するものでなければならず、その役割と職域に応じ、大学運営への参画の権利と義務を有する。
第13条 @評議会は、本学の最高の意思決定機関である。評議会における審議は、各教授会の意向をふまえることを原則とする。
A学長等の管理者は評議会の審議を最大限に尊重し、学内規則に則った民主的な運営を行う。
第14条 @学長の選考は、本学の全ての教職員が参加する直接選挙に基づき行う。学部長など各部局長の選考任免は、教授会等の構成員の直接選挙に基づき学長が行う。
  A学長等の管理者に対して、本学の他の教職員から解任を請求できる制度を設ける。
第15条 @大学の評価、監査のため、監査委員会を設置する。
A監査委員会は、本学の運営が全体として適正に実施されているか監査し、その結果を公開する。
▲Top
第5章 財政・評価
第16条 @大学の教育、研究、医療に関わる経費は、安定的に公的な資金でまかなわれなければならない。経済効率に偏った合理化は避けられるべきである。
A授業料や医療費、外部資金への依存は適正な範囲内に押さえられなければならない。
第17条 @評価は、格差づけのためではなく、教職員個々の関心および力量に応じた能力開発のために行われる。評価は、学問の自由や、知の共同体としての大学の性格を阻害するものであってはならない。
A評価は計量的、定型的な基準に偏ることなく、柔軟なものでなければならない。
B評価は部局や学問分野ごとの特性を配慮し、評価は、長期的、総合的視点に立って行われる。
第18条 @評価の基準が公開されるとともに、評価結果は被評価者に知らされなければならない。大学は教職員のプライバシー等の人権に配慮する。
A被評価者は評価が不当と考える場合、異議申し立ての権利を保障される。
▲Top
第6章 学生
第19条 @学生は教育への権利を有し、機会均等が保障されなければならない。
A学生は授業改善の取り組みに参加する権利と責任を有し、学習において主体性批判性を発揮する。
B授業料は適正な一定限度内にとどめられる。経済的に困難な学生には奨学の手段が講じられる。
C学部間の授業料格差は、これを認めない。
第20条 @学生は大学運営に参加する権利と責任を有する。
A学生は自治会を組織することができる。
B学生は個人またはグループ、自治会として、意見を表明する権利を持つ。
C大学は、学生と意見を交換する場を設け、かつ、学生の意見を正当に尊重すべき義務を負う。
▲Top
第7章 教職員
第21条 職制の改編等、教職員の労働条件の変更が行われる場合、関係教職員への事前の十分な説明が行われるとともに、不利益が生じないよう、必要な配慮がなされなければならない。
第22条 @本学の理念を実現するため、教職員の身分・雇用は最大限保障されなければならない。このことは、学問の自由を擁護し、有能な教職員を確保するための前提条件である。
A教職員の賃金・労働条件は、その職務に安心して従事できる水準が確保されなければならない。
第23条 教職員は労働に関わるすべての権利および市民的自由を享受する。
第24条 @大学は、秋田大学教職員組合を、秋田大学の労働者の代表として尊重する。
A秋田大学教職員組合は、組合員および全教職員の労働条件の向上のため、適切な役割を果たすものとする。

2003年7月26日 第11回秋田大学教職員組合定期大会決定
▲Top